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大弁如訥:大弁は訥なるが如し(たいべんはとつなるがごとし) 日ごろ感じたこと、知り得たことを何でも書きます。
by totunaru
「日本人の誇り」(藤原正彦著;文春新書)を読んで
 友人に強く薦められまして「日本人の誇り」を年末から年始にかけて読みました。著者の藤原正彦氏は新田次郎・藤原てい夫妻の次男で数学者であります。「国家の品格」などの著作もあり、一貫して「愛国心」や「武士道」を説いてきました。私はなんとなく旧い思想のように思え彼の本は敬遠していましたが、「永遠の0」を読んだ後でしたのでその流れの中で読んでみました。


  最近の日本の地盤低下は誰しも認めるところです。総理大臣は1年ぐらいで次々に変わっていき、周辺国の日本軽視の動きは益々勢いを得てきています。経済は「失われた10年」が終わりましても一向に改善しません。また子供たちの学力低下は呆れるほど進行してきました。藤原氏はこれらの事の原因は戦後教育の失敗にあると主張しています。つまり所謂「自虐史観」が原因の根底にあると見ているのです。日本には世界七大文明の一角を占める素晴らしき日本文明が存在していて、このことにもっと日本人(特に子供たち)は誇りを持つべきであると説きます。しかし「自虐史観」がそれを阻み続けているのですが、この自虐史観は日本人の精神の劣化を促すために、人為的になされ続けてきたものであると述べています。


  この「自虐史観」はほとんど「昭和史」における日本の戦争に起因しているわけですが、藤原氏は日本の歴史は「昭和史」だけを引き抜くのではなく、明治維新後の約100年の歴史(世界史を含めた)から観察するべきだた主張しています。帝国主義時代に遅れて参入した日本はその活路を中国(満州)に求めていきます。縦線としては同様に中国に活路を求めていた先行帝国主義列強(米、英、仏など)と鋭く対立していきます。さらに当時の共産主義国:ロシアの勢力拡大とナチス:ドイツの野心が横線として複雑に絡んできます。そして日本を日中戦争(中国における戦線拡大は日本の本意ではなかった)にくぎ付けにするために、ソ連や米国が中国の国民党軍や共産党軍に援助を拡大していくのでした。ソ連にとってはナチス・ドイツのソ連侵攻に備えて兵力を極東から移動することが出来たのでした。さらに米国の指導層は戦争に参入するために、どうしても日本からの開戦を必要としていました。そこで所謂ABCD包囲網、ハルノートなどで日本を追い込み、日米開戦へと日本を導いていったのです。さらに米国の戦後の日本政治・経済・社会への関わりは孫崎氏の「戦後史の正体」(当ブログ:2012年8月23日)で述べられている通りであります。


  完膚無きまで叩きのめされた日本は戦後は完全に民族としての誇りを失っていくわけです。しかし日本の敗戦と引換のように(日本の西洋との戦いに触発され)、植民地化されていたアジアにおいては独立運動が活発となりやがて次々に独立していくことになり、アジアという観点からしますと日本の戦いが全く無価値であったわけではないのです。そして藤原氏は日本が「誇り」を取り戻すためには次の3点を強調しています。第1は戦勝国の復讐劇にすぎない東京裁判の否定、第2は日本人の、日本人による、日本人のための憲法を作り上げること、第3は自らの国を自らで守ることを決意し実行すること、であります。藤原氏の歴史認識は最近かなり数々のメディアで取り上げられていますので私も認識していました。そして世界史とは謀略の歴史であるということも少しずつ理解してきています。ですから当ブログにおきましても世界の流れをしっかり見ていこうとしているのです。さらに「永遠の0」の時にも述べましたが、私は明治維新から太平洋戦争に至る動きをあまり理解してませんでしたので、しっかり勉強する必要があるようです。とにかく今年も忙しくなりそうです。

by totunaru | 2013-01-07 17:08 | 国内事情
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