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大弁如訥:大弁は訥なるが如し(たいべんはとつなるがごとし) 日ごろ感じたこと、知り得たことを何でも書きます。
by totunaru
「日本株潮目の転換へ」(武者稜司)を読んで
 株式関係者の中にはセル イン メイ (五月に株を売れ Sell in May)という格言があります。アメリカの投資ファンドの決算が5月に集中していることから、株式市場の下落傾向に拍車がかかるからこの様な格言が生まれた模様です。米株が暴落しましたら日本株が無傷であるわけにはいきませんので、株を売買する人々は(私も含めて)この5月は息を潜めて日本株の動向を見守ってきました。しかし日本株は意外に底堅かったのです。一時的に日経平均1万4千円を割り込みましたが、現在は1万4千5百円をキープしています。もしかして日本株は再び反転攻勢に転じて行くのでしょうか。ここで再び武者稜司の楽観論を紹介したいと思います。何故彼をいつも引用するかと皆さまは疑問に思うのでしょうが、彼の論理は簡潔で非常に解り易いのです。ですから彼の楽観論が破綻するとしましたら、彼の株上昇の根拠のどこに矛盾点があったのか見つけやすいのです。それがまた勉強になるのです。当ブログにコメントくださる投資家のJUSTICEさんは「逆指標の武者」としていますが、その武者のレポートを使いまして勉強させていただくのです。



 今回の武者のレポートの副題には「Enough is Enough(いい加減にしてくれ) 、悲観論はもうたくさんだ」と付いています。彼は現在日本株に対する過剰とも思える懸念事項が消えつつあるとしています。それは1つ目は新興国の金融不安、ウクライナなど地政学不安、米国の経済減速と金融緩和縮小によるリスク資産売り、中国失速という海外情勢不安でしたが、海外株式は堅調に推移しておりそれが過剰な不安であったことが証明されているというのです。2つ目は日本株に対する需給の変化を指摘しています。つまり外国人投資家が暴れまくる一方国内投資家の不在であった日本株におきまして、6月に成長戦略の一環として実施されるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革は年金、保険など多くの機関投資家の追随を引き起こし、大きな国内株式資金流入をもたらすだろうと指摘しています。新たな国内のリスクテイカーたちの参入です。3つ目はアベノミクスによる現実としてのデフレ解消と消費税増税のマイナス影響は想定以下であったことから日本の経済ファンダメンタルズの不安の一掃。4つ目に安倍政権に対する追い風を挙げています。つまり中国、ロシアの領土膨張政策、力による現状変更の意図が顕在化し、内外の安倍批判(特に米国で)は大きく沈静化しているのです。




 そして株を押し上げるだろうという円安要因が完全にそろいつつあると指摘しています。これは前回の武者レポートで報告しましたが再度簡単に掲載します。1つ目は黒田日銀による金融緩和です。2つ目は貿易収支の完全な赤字化。3つ目は円の売り買いを決定する実質長期金利の世界最低水準。4つ目は覇権国米国の意向として日本経済復活は米国の国益にかなうということが存在しているとしています。さらに円安以外での株式上昇での大事なことですが、2014年3月期には過去最高水準の企業利益(上場企業で経常利益36%増、純利益73%増)が報告されているということです。そしてこの企業利益は一過性ではなく今後も継続可能と指摘し、その理由として① 日本企業の世界最大のリストラ/スリム化(➡ 損益分岐点の大幅低下とアベノミクスによる売り上げ増のギヤリング効果大)② 日本企業の新ビジネスモデル(グローバル基盤)の確立③ 技術開発投資継続による技術優位性の確立をあげています。そして日本企業は「コスト優位・輸出競争力ベース」のモデルから「技術・品質優位、グローバル生産ベース」のモデルへと大転換を見事に果たしたのだと指摘しています。




 さてこれが武者の2014年末の日経平均2万円説の根拠でありまして、東京オリンピックの2020年には日経平均4万円説を唱えています。かなり彼の説は「捕らぬタヌキの皮算用」的なところもありますが、とても解り易い論理です。しかし期待通り動かないのが株式相場です。特に最近の相場は急騰、急落が頻繁に起こります。ですから長期スタンスで株式投資をするなどと悠長なことは言ってられません。そうかと言ってデイトレードは時間がある人にしか出来ません。私もデイはしていません。ですから時期を見ての短期の株式参入と撤退をおこないます。それが急落に捕まってしまうと「さあ大変」ということになるのです。嘗てJUSTICEさんがコメント欄で「株は下がるより上がる方が良いに決まっている」と述べていましたがその通りです。株が上がれば多少の差はありますが皆が幸せになれるのです。稀に株取引をしないのに株の暴落を喜ぶような人(取引をする人は買い場だとして喜ぶのですが…)がいますが「天に唾する」ようなもので、回り回って己に損が生じるということなのです。この辺りをよくわかっていない人が多いので困るのですが…。とにかく「セル イン メイ SELL IN MAY」は回避された模様ですが、今度は7月株大暴落説を唱える人々が現れ始めました。またいつか紹介します。

by totunaru | 2014-05-26 15:02 | 国内事情
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