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[アベノミクス成功を織り込む「ドル円」の上値余地](ロイター 高島修)を読んで
 衆院選の結果予想はそろそろ出始めています。大方の予想通り自民党の勝利に終わることは間違えありません。そしてそれを見越しましてドル円相場は再度ドル高円安の方向に動き始めているのです。この流れの中ではいくらアベノミクスを批判しても仕方ないのです。世界の大きな流れを掴んで、その流れに身を任さなければ溺死してしまいます。またこのブログはその大きな世界の流れを掴むための勉強のつもりで書いていますので、ご批判は色々あるでしょうが流れを掴んでいると思われる論文を取り上げて行きます。高島修は シティグループ証券 のチーフFXストラテジストであります。




 高島は<実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となり、形式的にはリセッションに陥ったことから、アベノミクスへの懐疑論が国内外で台頭している>が、<そうした中でドル円相場は120円に迫るドル高円安となっている。> <強まるアベノミクスへの懐疑論に対して、このドル高円安はむしろ為替市場がアベノミクスの成功を織り込む動きを見せていることを暗示している。なお、アベノミクスの成功の定義にはいろいろあろうが、ここではひとまずデフレ克服と定義したい。>としています。つまりマーケットは常に現実に起こることを先取りしていきます。アベノミクスが成功するか否かは私的には定かではありませんが、少なくともアベノミクスは今後しばらく日本の政策のど真ん中を走るということなのです。




 高島は面白いことを主張しています。あのレーガノミクスとアベノミクスが類似しているというのです。安倍もレーガンも自国の安全保障の確立を最終目標に据えているというのです。そしてその手段としてレーガンは(米国の)インフレからの脱却を目指したし、安倍は(日本の)デフレからの脱却を目指しているとしています。米国は<(当時のFRBの)ボルカー議長の下での超金融引締め策は事実上のドル高政策であり、ドル円相場は当時250円前後に位置していた消費者物価ベースの購買力平価(73年基準)を超えてドル高円安が進んだ>のでした。<その結果、米国はインフレという慢性疾患を克服し、経済構造改革も達成。東西冷戦にも打ち勝つことができた。>のでした。消費者物価ベースの購買力平価とはたとえばマックが米国で4ドルで日本では360円なら1ドル90円という為替相場を意味しています。




 現在の日米の生産者物価の購買力平価は100円に位置していると高島は言います。<この購買力平価を超えてドル高円安が進むのは、極めて異例の事態である>と指摘して、<消費者物価で見た購買力平価は現在125円前後に位置する計算になる。10月末の黒田日銀の追加緩和を受けて120円台に迫るドル高円安は、レーガノミクスの時以来、約30年ぶりにこの消費者物価ベースの購買力平価に達そうとする動きとなっている。>としています。これは<レーガノミクスが消費者物価ベースの購買力に達するほどのドル高によってインフレを克服したのと同じように、今日のアベノミクスがその購買力平価に達する円安によってデフレという「慢性疾患」(11月5日黒田総裁講演で使われた単語)を克服しようとしているように見える。>としています。つまりボルカーと黒田の共通の極端な通貨政策で、ボルカーはインフレを克服し、黒田はデフレを克服しようとしていると指摘しています。




 ですから<レーガノミクスが規制緩和や減税で小さな政府を目指したのに対して、アベノミクスが「第2の矢」で財政刺激策(今回の消費増税先送りを含む)も用いて、拡張色の強い政策を行っているのは、当然の成り行きのようにも思える。>としています。しかし<消費者物価ベースの購買力平価に達するようなドル高円安は2017年までは起こらないのではないかと考えていた。> なぜなら<米国が経済政策面でも自由度が大きいのに対して、安全保障面を含めて米国への依存度の高い日本が、円安ドル高を伴うデフレ克服策を遂行するには、そうした政策に対する米国の支持、少なくとも黙認を得ることが必要になるが、対中政策が定まらないオバマ政権の下では明確な対日政策も見えてこないと思っていたからである。> ところが現実にはドル円120円に迫るような勢いを見せていることから、米国は日本の円安誘導の為替政策を認めているのです。つまり米国はアベノミクスを後押しすることを決心しているということになるのです。ですから韓国が日本の円安誘導政策を幾ら非難しても欧米は取り上げず、日本の円安誘導への非難が世界の大勢になることは無いのでした。




 そして<今回の消費増税の2017年への先送りで、黒田日銀の金融緩和が早期に打ち切られるリスクは後退し、恐らく18年頃まで継続、場合によっては再度強化される可能性さえ浮上した。FRBの利上げと相まって、これは17年、18年頃まで長期的なドル高円安が進行する。> <今回の消費増税先送り、過去数カ月の原油安、追加緩和後の円安はいずれも来年以降の日本の景気下支え要因となる。>としています。私も全く同感であります。これが世界が日本に望むベストシナリオなのでしょう。もちろん中露の経済リスクが今後の波乱要因として横たわっているのは確かですが…。とにかく為替相場から見た日本経済の先取りは中々興味深いものを示唆しているようですよ。

# by totunaru | 2014-11-29 16:18 | 国内事情
消費税増税は必要なのか
 安倍政権としては日銀の2%インフレ目標による異次元の金融緩和という追い風の中でデフレ脱却を目指しているところでありました。つまり量的緩和で円安が進めば、輸出が増えて日本経済が復活すると考えていたのでした。しかし現実には円安が進んだにもかかわらず、輸出数量はほとんど増えていないのでありました。その上、円安によって輸入依存度の高い食料品などの価格や原発停止によるエネルギーコストの増大が起こり、消費が手控えられるという副作用も出始めているのでした。




 そこに4月からの消費税3%増税が加わりましたので、国内の消費は極端に落ち込んでしまったのでした。<百貨店売上高でみると2012年12月はマイナス6%と大幅なマイナスだったが、安倍内閣が本格発足した2013年1月以降プラスに転じた。今年3月まで15ヵ月間のうちマイナスになったのは3回だけ>(磯山友幸「経済ニュースの裏側」)だったのですが、<それが今年4月以降、激変する。3月の消費増税の駆け込み需要が大きかったこともあり、4、5、6月は2ケタのマイナスが続いた。9月にはマイナス2.8%にまで減少幅が小さくなったのだが、10月は6.4%減と再びマイナスが大きくなった>(磯山友幸「経済ニュースの裏側」)のでした。このままではアベノミクスどころか日本経済そのものが吹き飛んでしまいそうな事態なのでした。




 そこでアベノミクスを支持している国内外の論客たちは、いっせいに更なる消費税2%増税の延期ないし中止を訴え始めたのでした。「今年4月に行われた1回目の消費増税で、せっかく上昇しようとしていた日本経済の勢いが失われそうになっています。いまここでさらに増税すると、完全に推進力が失われてしまう可能性があるのです。」「いったんそうなってしまえば、安倍総理が就任してからやってきたことがすべて振り出しに戻り、今と同じ状態にすることはほとんど不可能になるでしょう。だから絶対に増税してはいけません。とにかく、いま一番重要なことは、デフレを脱却して、安定した経済成長のもとインフレを起こすことなのです」(ノーベル経済学賞受賞者でプリンストン大学教授のポール・クルーグマン 週刊現代)「昨年来、国民の間に『長いあいだ苦しんだデフレから脱却できるのではないか』という期待が生まれようとしていました。ところが、今年4月の増税で国民の将来に対する予想は不安定になってしまった。ここでさらに増税を決めると景気に水を差すことになる」(内閣官房参与の本田悦朗 週刊現代)「金融緩和をしながら増税するのは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもの。こんな無茶苦茶をやっていると、日本は壊れてしまう。消費税を8%に引き上げたことのマイナス効果は、'97年に5%に引き上げたときよりも深刻です」(産経新聞編集委員の田村秀男 週刊現代)「橋本龍太郎内閣が消費増税した結果、所得税も法人税も減少しました。財務省(当時、大蔵省)はアジア通貨危機のせいにしたが、実際はデフレ下で増税したために景気が冷え、企業収益も所得も減ったため、全体としての税収も減ったのです」(嘉悦大学教授の高橋洋一)




 一方財務省が押し進める増税派は、「増税して財政再建をしないと、日本政府に対する信頼が揺らぎ、国債が暴落、金利が急騰し、国家破産への道に至る」と警告しているのでした。しかし「日本の国債はほぼ国内で消化されており、極端に低い金利を維持しています。その金利負担はOECD(ヨーロッパ、北米等の先進国によって、国際経済全般について協議することを目的とした国際機関)諸国の中でも最低レベルですので、信用不安など心配する必要はありません」(経済政策研究センター共同所長ディーン・ベイカー氏 週刊現代)。そしてこれらの援軍や助言を受けて安倍政権は消費税2%値上げの延期を決断し、国民に信を問うということで衆院解散総選挙という奇策にでたのでした。しかし今回安倍首相は消費税率の10%への引き上げを2017年4月としたうえで、今度は景気条項を付さずに、必ず増税すると公約したのでした。




 このような流れの中の総選挙ということなのです。しかし一体景気を無視した消費税値上げは必要なのでしょうか。高橋洋一ではありませんが、消費税の増税で税収が減ってしまいましたら、これは酷いブラックジョークではないでしょうか。とにかく安倍政権としては衆院で安定多数を得た暁には、景気対策を最優先課題として行わなければいけないのでしょう。私としては税の簡素化を伴った直間比率の見直し、法人税の大幅な減税、原発の即時再稼働、TPPの一層の推進など一気呵成に行ってもらいたいものです。この際安倍の抱くポリティカルマターは脇に置いといてもらいたいものです。二兎追うものは一兎も得ずというではありませんか。

# by totunaru | 2014-11-26 12:03 | 国内事情
習近平という男は
 習近平という男は想像通り小物のようであります。先の日中首脳会談で安倍と握手をした際の不機嫌な顔には驚かされました。最低限のAPECのホストとしての振る舞いさえも出来なかったのです。子供でももっと愛想よく出来るのでしょうが、大の大人が…。これが大国を自称する中国のトップの振る舞いというわけですので笑ってしまいます。実生活でもこのような幼稚性の漂う男と親しく付き合うことは極力避けたいものです。おそらく世界中の指導者たちも同様な思いでいることでしょう。




 しかし習近平の様な幼児性を持つ男が中国のトップにいること自体非常に不思議な気がします。おそらく民主主義国の選挙では絶対に当選は出来ないでしょう。中国という閉鎖社会の一端を垣間見たような気がします。習近平は何故国家主席になれたのでしょうか。私にはどうしてもあの薄熙来事件が引っかかるのです。当時中国共産党中央政治局委員であり重慶市共産党委員会書記の薄熙来は、とても中国国民に人気が高かったのです。一方次期主席と目されていた習近平は中国国民には殆ど知られていませんでした。人民解放軍総政治部歌舞団団長の彭麗媛の夫というくらいのものだったのです。一方薄熙来は重慶市のトップとして外資導入による経済発展、マフィア撲滅運動、格差が少なかった過去を懐かしむ革命歌の唱和運動などで注目されていたのでした。そのため、2012年秋に開催される中国共産党第18回全国代表大会において中国最高指導部である中国共産党中央政治局常務委員会入りについて注目されるキーパーソンと目されていたのでした。




 そして2012年2月6日、薄熙来の側近の重慶市副市長である王立軍がアメリカへ亡命するために成都市のアメリカ総領事館に駆け込む事件が発生したのでした。彼の米国にもたらした情報は驚くものだったのです。それは薄熙来がクーデターを企て、自分が習近平に取って代わろうとしているという情報だったのでした。オバマと当時の国務長官のヒラリーはこの情報の扱いに苦慮しました。つまりこの情報を習近平(当時の主席は胡錦濤)側に知らせるか否かということでした。習近平側に知らせるということは現政権の延命に手を貸すことであり、逆に知らせないということは薄熙来側に手を貸し中国の混乱(崩壊)を誘発できるという機会を手にするということでした。結局オバマとヒラリーは中国の混乱による世界経済の大失速を避けるために習近平(胡錦濤)側に手を貸したのでした。このおかげで習近平は国家主席というポストを手に入れることが出来たのでした。主席になった後の習近平の政策は殆ど薄熙来の真似でした。腐敗撲滅運動、格差是正と毛沢東主義への回帰はまさにそれなのです。もうひとつ習近平は薄熙来のクーデターの原体験から極度に政敵を恐れ、徹底的な政敵の粛清を断行しているのです。




 この流れの中でのオバマと習近平の親密度は濃厚なのです。ですから習近平は平気で米中二国による世界支配などの荒唐無稽な提案をしてくのでした。さすがのオバマも習近平の露骨な要求は退けましたが、自分(オバマ)が習近平を国家主席の地位に付くための手を貸したという気安さから何かと中国寄りの態度を示しているのです。しかし習近平という男は酷い外交音痴なのです。日本に対しては尖閣、防空識別圏などで日本国内に嘗てないほどの対中警戒感を引き起こしているわけですが、ベトナム、フィリピンに対しても強硬な南沙、西沙諸島への侵略で対中警戒感を引き起こしているのです。あまりの中国の露骨さにあのオバマでさえ習近平にくぎを刺すようなコメントを発せざる得なくなったのです。習近平のがさつな外交政策はまだまだあります。習近平のインド訪問中に中国人民軍兵士がカシミール(印中が国境紛争しているところ)国境を越えるような事態を引き起こしているのです。今回のAPEC期間中の中国漁船による赤サンゴ乱獲事件も同様で、習近平は右手と左手が違うことをしているのです。こんな手法で国際的な信用を得ることなどは出来ません。しかも国際法を順守する姿勢は全く見せないのです。




 こうして見てきますと何故習近平が中国のトップになれたのか不思議で仕方ありません。どうしても米国の援助の元の政権であるとしか見えないのです。しかし恐らく習近平の無能さに米国(オバマ以外)の指導者層はかなり苛立っていることでしょう。同様に米国の経済界も習近平の中国国内の米国企業に対する迫害にかなり腹を立てています。正直なところ機会がありましたら李克強等の様な穏健な政治家にトップを取って代わってもらいたいところでしょう。この様に習近平はどこからも好感が持たれていないのですが、中国内の庶民からは腐敗撲滅運動が功を奏して人気があるようです。この唯一の生命線を失いましたら習近平は間違い無く失脚するのでしょう。それを知っているからこそ露骨なまでのイヤイヤ状態で安倍と握手をしたのでしょう。とにかく彼の幼稚性の漂う行動はまさに独裁国の独裁者と酷似しています。こんな男が中国のトップなのですから中国国民に同情しますね。

# by totunaru | 2014-11-15 09:03 | 海外事情
安倍はどうやら衆院解散へ向かうようだ
 12月衆院解散の噂に黒田バズーカと同様に国民は皆一様に驚いています。与党は衆参で過半数を制していますので、何も2年足らずで衆院を解散して総選挙を行わなくても良いだろうと思うのが常識的な考えでしょう。しかし消費税率を10%に引き上げるかの判断材料となる7〜9月期の国内総生産(GDP)の速報値が17日に発表されるのですが、これが相当悪いということは殆どの識者には共通認識となっています。そこで首相経済ブレーンの浜田宏一、本田悦朗内閣官房参与などのアベノミクス擁護論者たち(クルーグマンやIMFも含め)は消費税増税先送り説を活発に流しています。この援護射撃を受けて元々消費税増税に消極的であった安倍は、消費税増税を先送りして「国民に信を問う」という名目で、一気のこのアベノミクスに対する不信感が渦巻く季節を突破しようとしているのです。




 「消費税増税延期の信を問う」という名目以外に安倍の衆院解散によってもたらされるメリットはどんなものがあるのでしょう。竹中治堅 (政策研究大学院大学教授)は次の4点を指摘しています。第一に野党は完全に虚を突かれて選挙準備が整わず、しかも安倍の高支持率を背景にして準備が一応整っている自民党が圧倒的に有利にあるというのです。第二に現在も景気回復の足取りは重く、来年予定通り10%に引き上げを行った場合、2015年後半から16年前半にかけての経済状況に悪影響を及ぼすことが考えられるが、これを避けられることができるのです。第三に2016年夏に予定される参議院議員選挙に対して、(消費税増税延期で)景気悪化を防ぐことによって参院選挙を有利に進めることが出来るということなのです。第四に次期国会では<集団的自衛権見直しに伴う安全保障関連の改正法案はいずれも与野党激突法案になることは必至>なのです。そこで安倍政権としては国民の信任を得たというお墨付きをもって国会審議に望みたいということなのです。




 一方消費税増税に積極的な財務省は虚を突かれています。なぜなら財務省が頼りにする増税賛成の政治家たち(谷垣、麻生、宮沢など)は全て政権内に取り込まれています。閣内にいますので倒閣運動もできず、さらに増税延期後即衆院解散という流れが出来てしまいますともう抗うことはできないのです。しかも政治家は選挙が飯より好きときていますので、これはもうどうしようもないのでしょう。日銀の黒田も完全に安倍に騙されました。「消費税増税するというから、大判ふるまい(異次元の金融緩和)をしてやったのに…。」同様に私も完全に騙されました。日銀と政府は完全に一体になったと思ったのですが、安倍政権が日銀を手玉に取ったのでした。やはり政治家は人を騙すのが仕事ですから一枚上手でした。しかしこれで黒田のバズーカ第三弾は打ちにくくなってきました(もう安倍には騙されないと黒田は心に誓っているのでしょうから)。




 この衆院解散の一連の動きは、消費が予想を大きく下回るとの知らせを受けて、恐らくシナリオは作られていたのでしょう。誰が作ったのかはわかりませんが見事なものです。何故なら安倍政権が得意とする外交日程も上手に盛り込まれていたのです。北朝鮮との拉致交渉は北の妨害でうまくいきませんでしたが(本来は劇的な結末を期待していたのでしょう)、APECでは習近平を利用して首脳会談を演出しました。さらには頑ななパク・クネとも曲がりなりにも談笑をしました。これで閣僚不祥事の色を消しています(すっぱ抜かれた野党の不祥事でも相殺しているのです)。北朝鮮は(安倍政権は危ないとの誤情報が入ったのかもしれませんが)安倍の足元を見て失敗をしました。安倍に恩を売ることが出来なかったのです。そういう意味では中韓には安倍政権が今後も続くという正確な情報が入っていたのでしょう。とにかく一刻も早く経済を安定上昇軌道に乗せて、本来安倍政権が目指す安全保障と憲法改正の方向に戻っていかなければいけません。時間は限られているのです。ですから安倍政権は衆院解散の方向に動き出していくのでしょう。そのほうが自然です。

# by totunaru | 2014-11-12 14:40 | 国内事情
米国中間選挙結果を考える
 米国の中間選挙の結果では上院、下院共に共和党が過半数を制しました。単純に考えますとオバマ(民主党)は信任を失いつつあります。オバマの支持率も40%前半台に低迷しています。元々オバマが大統領になれた理由は「チェンジ」であります。「世界から核兵器を無くそう」でノーベル平和賞を受賞しています。ですからイラクからの米兵の撤退、16年末までに行われるアフガニスタンからの米兵の撤退も当然公約通りなのです。さらにオバマはリーマンショックで傷つきました米国経済を曲りなりにも成長軌道に乗せているのです。ですから私がもし米国市民でオバマの大統領選出に賛成したものであるならば、私はオバマに及第点をあげたいと思うのです。ところが何故こんなにも不人気なのでしょう。




 現在の米国の生活は<(オバマの)就任時と比べれば株価は上がり、失業率は下がった。それでも標準的な家計の所得は大不況前の2007年の水準を下回る。統計上は失業者に含まれないが、フルタイムの仕事が見つからずにパートタイムの仕事をしている人も多い>(with news)なのです。つまり経済の復活の実感が国民に感じられていないのです。さらに<オバマケア(医療保険制度)は低所得層の保険料負担への支援などのため、10年間で約1兆5千億ドル(約155兆円)の財政負担をもたらすと試算され、保守層が掲げる「小さな政府」の理念とは対照的だ。自らも高失業率に悩む米国の中間層には、低所得層への「大盤振る舞い」で負担を背負いこむことへの不満も大きい>(MSN産経ニュース)という米国国民特有の自立意識がオバマに対する不人気を加速しているようです。




 さらにオバマは移民制度改革、同性婚への支持、最低賃金引き上げといったリベラル色の強い政策を進めているのですが、これが下院の過半数を握る共和党との対立を激化させているのです。しかも今回の中間選挙で上院も共和党が過半数を制したことで、益々議会と大統領の対立が激化してきましてオバマのリベラルな政策が中々実行されないことが予測されるのです。こういったゴタゴタに米国国民はうんざりしているのです。しかもオバマの目指すリベラルな政策が実行されないため、オバマを支持していた低所得者層さえまでもオバマと距離を置きだしたのです。今回の中間選挙の投票率が投票率の40%を下回ったのでした。つまり本来オバマを支持するとみられるリベラルな若者の投票率が低く、民主党の低迷につながったのでした。低所得者や民主党支持者はオバマ以上のリベラルな政策を求めているとも言えるのでしょう。




 そしてオバマの外交政策は米国内ではとても評価が低いようなのです。オバマは彼の生い立ちから考えても平和主義者でなければ現在の様な成功を手に入れることは出来なかったことは事実でしょう。ですから彼の外交政策の基本は極力争いを避けようとすることなのです。そして利害の反する国に対しては交渉と経済制裁の合わせ技をよく多用します。イラン、シリア、ウクライナ紛争で良く見かけられるパターンです。さらには大国ロシアや中国に対してどのような付き合いで今後の世界をリードしていこうかとの構想が不明瞭なのです。このようにオバマ就任以来米国は超大国らしい指導権をすっかり失い後退や挫折の一途との評価が米国に溢れているのです。しかも中国に対する甘さはオバマに対する評価を米国内だけでなく日本国内でも落としています。日本では2013年から2桁単位で(オバマの)支持率が急落しているのです(CNN.co.jp)。逆に中国では約半数の支持を得ており、去年1年で20ポイント上昇しているそうなのです(CNN.co.jp)。これでは米国がどちらの味方だという素朴な疑問が出てきます。




 オバマという男は貧しい家の出で、ケニア人の父と米国白人の母を持ち、極めて優秀な弁護士であり、国会議員(上院議員)だったわけです。しかも若く端正な容姿を持ち、弁舌は爽やかなので誰もが彼に期待したのでした。世界を「チェンジ」して、それこそ異次元の世界に連れて行ってくれるのではないだろうかと。しかし現実の国際政治にはとても一筋縄ではいかなかったのです。そもそもハト(平和的な善玉)ではタカ(好戦的な悪玉)を制御できないのは歴史が証明しています。日本でも民主党政権(ハトと呼ぶには異論もあるでしょうが、安倍と比べますとハトです)のリーダーたちが良い例です。彼らは多くの国民の期待を裏切り殆ど何も実行できず、益々日本の国際的価値を失墜させたのです。でも民主党政権が誕生した時には国民の大多数は支持し、「チェンジ」を期待していたのです。しかしリーダーはハトでなくてタカでなければ、敵対するタカから譲歩を引き出したり、味方のタカを抑えることは出来ないのです。これが哀しいかな人間の現実と認識しなければいけないのでしょう。とにかく前述の理由でオバマの人気は低迷しているようです。

# by totunaru | 2014-11-10 19:10 | 海外事情